風味絶佳
「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」。孫にグランマと呼ぶことを強要する祖母・不二子は真っ赤なカマロの助手席にはボーイフレンドを、バッグには森永ミルクキャラメルを携え、70歳の今も現役ぶりを発揮する――。 鳶職の男を隅から隅まで慈しみ、彼のためなら何でもする女、「料理は性欲以上に愛の証」とばかりに、清掃作業員の彼に食べさせる料理に心血を注ぐ元主婦など、お互いにしかわからない本能の愛の形を描いた珠玉の6篇を収録。 山田詠美が作家生活20年目に贈る贅を尽くした最高傑作。
タイトルキャラメルの表紙にきゅんときて、(そのくせ買わずに)図書館で予約しておいた「風味絶佳」がようやく手元に届いたので早速読みました。
いやぁ、もう泣いた泣いた泣いた!!
読書してこんなに泣いたのは久しぶりでした。
うーん、山田詠美の今までの文体や世界観をこよなく愛していた人には、少し抵抗があるかも知れません。
触れると血が出てしまいそうな、性急で濃厚な、小説の中でしか味わえない世界観はそこにはなく、日常の中にある恋愛風景を切り取ってきた短編集、と言った趣です。
表題作のキャラメルを筆頭に、各作品中で食事シーンが出てくるのですが、食べているものもシュークリームや渋柿、すいかなど、地に足のついた普通の食べ物だけ。
素肌にこぼれてしみこんでいく赤ワインや、ローストチキン、みたいな食べ物は出てきません。
男性の登場人物の職業も
- 「間食」:鳶職
- 「夕餉」:ゴミ収集の仕事
- 「風味絶佳」:ガソリンスタンドの店員
- 「海の庭」:引越し屋さん
- 「アトリエ」:汚水槽作業員
- 「春眠」:火葬場職員
と一般的に大変だと呼ばれる肉体労働系業務で、さらに地に足がついている印象。
ごく自然に物語の世界に入り込めました。
一番好きなのは「夕餉」。
誰よりもおいしい料理を最愛の彼に作って、その料理で彼に認められ求められる事により、今まで過ごしてきた元家族からは得る事のできなかった居場所を、自分で懸命に作り出そうとしている主人公の心の動きにどっぷり共感→号泣しちゃいましたねぇ。
私のようなコンプレックスの塊人間にはぐっとくるものがあります。
そのままの自分をそのまま受け入れてくれる人は必ずいる、幸せは自分で作り出せる、と前向きになれる話で、恐ろしく好みだったので購入決めちゃいました。
恋愛を軸に人生のほろ苦さを味わう事の出来る作品だと思います。
甘いだけの恋愛小説が苦手な人にもお勧め。
構成が巧みなので飽きずに最後まで読めるんじゃないかなぁ。
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